土地購入時の物件状況報告書は必要?チェックポイントを詳しく解説

不動産知識

熊澤 直也

筆者 熊澤 直也

不動産キャリア8年

・大手IT企業で7年間、大手不動産仲介会社で8年間勤務
・名古屋市内、愛知県北部を中心に豊富な成約実績
・前職大手不動産会社での全国表彰回数は2回
・自身での不動産売買経験も5回
自身の経験をもとに良かった点、住み替えで失敗した点を踏まえ、最適なご提案をさせていただきます。

土地の購入を考えている方にとって、その土地がどのような状態であるかを事前にしっかり把握することはとても大切です。知らずに購入してしまうと、思わぬトラブルや追加の費用が発生することもあります。この記事では、「物件状況報告書」とは何か、その重要なポイントや、土地購入の際に押さえておくべき注意点について、分かりやすく解説します。安心して土地選びができるように、基本から丁寧にご説明しますので、ぜひ最後までご覧ください。

物件状況報告書とは何か、その重要性を説明する

「物件状況報告書」とは、不動産売買において、売主がその物件について知っている範囲内で現状や不具合を買主に書面で告知するための書類です。土地に関しては、不動産会社を通じ重要事項説明書に組み込まれることもありますが、独立した書類として作成・交付される場合もあります。

土地に関する主な記載内容には、境界の確定状況(土地の境界標の有無や越境の有無)、土壌の状況(地盤沈下の有無、土壌汚染の疑いなど)、埋設物の存在などが挙げられます。これらは土地の利用に直結する重要な事項であり、記載漏れは後々のトラブルの原因になり得ます。

また、物件状況報告書に記載された内容と実際の土地の状況が一致しない場合、「契約不適合責任」が生じ、買主から修補や損害賠償、契約解除などの請求を受ける可能性があります。これは、2020年4月の民法改正によって適用される制度です。

項目主な記載内容意義
境界の状況境界杭の有無、越境の有無所有範囲の把握・近隣トラブル防止
土壌・地盤沈下の有無、土壌汚染の可能性安全性・利用可能性の判断
埋設物旧建物基礎・廃材の有無建設計画への影響・費用の見通し

土地購入時に確認すべき法的・公的事項

土地を購入する際には、法令や公的資料に基づく確認をしっかり行うことが不可欠です。まず、登記簿や公図を通じて、境界の確定状況や登記簿記載事項(地番、地目、面積、権利関係など)を現地実測と比較し、相違があれば契約内容に反映することが大切です。特に農地から宅地へ変更が必要な場合や、抵当権・借地権・地役権などの権利が残っていないかは、必ず確認してください。また、造成地の場合には許可の取得や検査済証の有無も必ず確認を要します。

項目確認内容注意点
登記簿・公図地番、地目、面積、所有権・権利関係地目が農地なら宅地化の可否を確認
境界の確定実測との整合性後のトラブル防止のため、きちんと確認
造成地の法令許可検査済証、開発行為・造成の法的手続きを確認工事が未完了だと建築できない恐れあり

以上は、土地の取引における基本的な確認事項ですが、これらを怠ると所有権や用途変更に関するトラブルや、建築の制限につながり、将来の生活に大きな支障を来すことがあります。必ず事前に明らかにしておきましょう。

次に、都市計画法や建築基準法などによる制限についても確認が必要です。用途地域や建ぺい率・容積率、道路との接道義務、風致地区や景観地区といった法令規制により、建築の可能性や将来の利便性に大きな影響があります。特に接道義務が満たされない場合、建築が認められないこともありますので注意が必要です。

さらに、近年では自然災害への備えも重要な検討項目です。宅地建物取引業法の改正により、水害ハザードマップ(水害、洪水、内水、高潮など)の提示と説明が重要事項説明の一部として義務付けられています。これには、国土交通省による「重ねるハザードマップ」や自治体製作の「わがまちハザードマップ」などを活用して、浸水想定区域か否か、浸水深の予測を事前に確認することが含まれます。加えて、土砂災害警戒区域や津波警戒区域の有無についても重要事項説明の対象になります。

最後に、これらの法的・公的事項は、不動産の安心・安全な取得に直結する要素です。ご自身でも確認し、不明な点があれば専門家に相談するなど、万全な準備をして土地購入に臨みましょう。

地盤・土壌など土地特有のリスクチェック

土地を購入する際には、地盤や土壌、地中埋設物など、目に見えないリスクを慎重に確認することが大切です。

まず、地盤調査報告書の有無を確かめてください。これには、現地での地歴調査、地中レーダー探査、ボーリング調査などが含まれ、地盤の強度や埋設物、土壌汚染の有無が記載されています。不動産購入前に専門業者に調査を依頼し、報告書を取得して内容を精読することが重要です。

次に、土壌汚染や地中埋設物の潜在的リスクを確認しましょう。地中埋設物とは、古い建物の基礎、瓦、コンクリートガラ、井戸、浄化槽、配管など、地中に残る人工的物体を指します。これらが存在すると、建築工事の支障となり、撤去のための費用や手間、不具合発生時には契約不適合責任によるトラブルにつながる可能性があります(例:売主の説明義務不備による責任)。

これらのリスクに対する判断と対応案として、以下の表のように整理してみましょう。

リスク項目確認内容対応案
地盤強度地盤調査報告書(例:スクリューウェイト貫入試験やボーリング試験)報告書を取得・内容を確認し、必要であれば補強工事を検討
地中埋設物地歴調査、非破壊探査(レーダー探査)、掘削調査による確認埋設物の有無・種類・範囲を把握し、撤去や地盤改良の対応を検討
土壌汚染表層土壌調査、深度方向調査による分析汚染があれば詳細調査を依頼し、除去や改良、費用負担について交渉

地中埋設物に関しては、調査方法によって費用に幅があります。地歴調査は概ね5~20万円程度、地中レーダー探査は10~15万円、ボーリング調査は簡易で10万円程度、詳細では30万円程度が相場とされています。

最後に、調査結果に基づく判断のポイントですが、埋設物の影響範囲や撤去の可否、費用負担の所在(売主か買主か)、契約不適合責任の範囲を明確に検討してください。建築計画に支障がある場合は、契約解除や代金減額、撤去費用の請求など法的対応を取ることも可能です(契約不適合責任に基づく請求)。

物件状況報告書を使った実務的チェック方法

土地購入を検討されている方にとって、物件状況報告書は単なる書類ではなく、実務上の重要なチェックツールです。ここでは、効果的に活用するための3つの具体的な手順を整理してご紹介いたします。

ステップ内容目的
1.報告書の入手と事前精読契約前に報告書の写しを受け取り、全体を丁寧に読み込みます。記載漏れや不明点を早期に発見し、焦らず対応できます。
2.疑問点は必ず確認・相談記載に疑問や不明な点がある場合は、内容を確認し、不安があれば専門家にも相談します。「知らなかった」で後悔するリスクを防ぎます。
3.記載内容と現地状況を照合報告書にある境界や地勢、汚染などの内容を現地で実際に確認し、一致しているか確かめます。書かれている事実と現実の乖離を早期に把握し、安心して取引できます。

まず、報告書のコピーを早めに入手し、事前に精読しておくことで、見落としや曖昧な点を減らせます。記載内容が不明確な場合、すぐに担当者に確認し、必要であれば司法書士や土地家屋調査士といった専門家に相談すると安心です。さらに、報告書に記された境界位置や面積、地勢、接道状況、あるいは土壌汚染の有無などが、実際の現地と一致しているかどうか、まずは現地で目視や測定器による簡易確認を行いましょう。

このように、報告書の確認と現地照合を組み合わせる方法は、情報の信頼性を確保し、安全な土地購入へつなげるために非常に有効です。

まとめ

土地を購入する際は、物件状況報告書をしっかり確認し、記載内容と現地状況を必ず照合することが大切です。法的な制限や災害リスク、地盤や土壌の状態も一つずつ丁寧に確かめることで、安心して土地を選ぶことができます。不明点はそのままにせず、納得いくまで調べ、必要に応じて専門家へ相談しましょう。慎重な確認が、満足度の高い土地購入への近道です。

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この記事の執筆者

このブログの担当者 熊澤

◇不動産キャリア:8年

◇保有資格:宅地建物取引士・測量士補・基本情報技術者/応用情報技術者

◇大手IT企業で7年、大手不動産仲介会社で8年間、名古屋市内、愛知県北部を中心に豊富な成約実績がございます。前職大手不動産会社での全国表彰回数は2回。 自身での不動産売買経験も5回あり、良かった点、住み替えで失敗した点もございます。その経験をもとに最適なご提案をさせていただきます。

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